ダウ平均の暴落を願うドル売り日記

暴落を願うトレーダーの日常と相場の話。

リーマンショックの内情が分かる…『危機と決断 前FRB議長ベン・バーナンキ回顧録』を読んでみた感想。

今日は本の感想です。
今日も相場の話はありません。
『危機と決断 前FRB議長ベン・バーナンキ回顧録』上巻、下巻。

 

 

 

 

 

この本は、上下巻に渡る長い本で、大体15%読むのに2時間程度かかるものです。
私は忙しいので、8月26日に購入しましたが、読み終わったのは11月18日になりました。
率直に言って、難しいけど面白い書籍です。
普段から中央銀行の発表に慣れている面々にとっては、考えながら読めば難解な箇所はないですが、それが遠い世界の人間というタイプの人には、少し読みづらいかも知れません。
今日は、それの感想です。

目次

①リーマンショックについて詳しく知れる本書

②欧州の金融危機やドッドフランク法について

③私から見た著者の人柄

④日本人の金融政策や中央銀行についての勘違い

リーマンショックについて詳しく知れる本

一番印象的だったのは、AIGは当時のアメリカの法的枠組みで救済可能だったが、リーマンは、法的枠組みで救済不可能で救済するのなら買い手が必要だったとあった部分。
ここについて、私は別の本を思い出した。
『スクエアアンドタワー』だ。

 

 

この本には、リーマンのCEOは当時他の金融の有力者との関係が密ではなかったとあった。
バーナンキ元議長の本には、リーマンの資産が買えないぐらい他と比べてまずい状況だったかは、書かれていなかった。
結局は、あまり仲の良くない人は助けたくないと皆思ってしまうのかも知れない。

少し話がズレたが、この本には、リーマンショックについて本当に詳しく書かれており、当時の第一人者の記述ということもあり、当時を振り返るには良書だ。
もう一つ印象的だったのは、リーマンショックの前年やその年、金利を直ぐに下げなかったと言う点だ。
私は、リーマンショックは偶然であり、結局は利下げが遅れたことが、当時の金融危機の原因ではないかと思えてならない。
そこが印象的だった理由は、当時、原油高から来るインフレ圧力が強く、インフレを心配して直ぐには利下げが行えなかったという点だ。
インフレ率というのは曲者らしい。
日本も、バブルの時、危ないと分かっていても、デフレだという理由で利上げを行い、バブルに水を差すことが出来なかったからだ。
その経験との対称性は、美しいとすら思える。
この本には、リーマンショックの前年からその年にかけて、中央銀行財務省や議会の間でどの様な話し合いがなされたか等書かれている。
当時の金融政策の流れを追うこともできる。
そして、トレーダーとして参考になる点は、やはり、利下げが早ければ株価の暴落は基本防げるという認識をこの本から得られることだろう。
リーマンショックの時頻繁にトレードしていた人には懐かしい書。
しかし、当時の参加者ではなくても、金融危機を知らない人間は、一番身近な危機として読んでおくといいだろう。

②欧州の金融危機やドッドフランク法について

ドッドフランク法と言う言葉と金融危機の組み合わせを、昨今の株高を謳歌している人は、もう一度思い出して欲しい。
健全に金融機関が運営でき、かつ、危機の目を摘む為に作られたこの法律…実は昨今少し規制緩和されている。

jp.reuters.com

また金融危機は起きやすくなっているかも知れない。
しかしそれはずっと先の話かもしれない。
この本には、欧州の金融危機の際に、南欧諸国に財政緊縮を要求したが、ドイツなどの優等生も財政緊縮をしたとあった。
著者は、それを合理的ではないと判断している印象だ。
しかし、欧州に緊縮を強いるドイツの弁を納得させる為には、ドイツだけ景気が良くなるわけにもいかなかったのだろうと思う。
当時、欧州が示したかったのは団結だろう。
やはり、分断のきっかけになるものは、避けたかった。
その気持ちは分からなくもない。
個人的には、この本はリーマンショックについての書だが、ユーロ危機の時期も議長だった人物による回顧録なのだから、ユーロ危機についてももう少し詳しくても良かったと思った。
しかし、自国での危機だったので、やることがFRBとしては余りなかったのかも知れない。
その辺については、記述の少なさが少し残念だ。

③私から見た著者の人柄

極めて聡明な人物という印象が拭えない。
正直、当事者だったとは言え。これだけ専門用語ばかりの難しい本を当たり前の日常として書けてしまって、それはもう一線から退いた後だということを思うと、凄いという一言に尽きる。
バーナンキを議長にしたのは、共和党ブッシュ政権だが、思想としては、リベラルな印象を受けた。
この本以外にも、中央銀行総裁が書いた文章はかなり見てきているのだが、やはり、全員に共通する点でもあるが、淡々として、理屈っぽくはある。
本書でも、中央銀行の透明性や市場とのコミュニケーションの大切さについて一部書かれているが、正直、そう言うのは苦手なのではないかと思う。
私は、自分も理屈っぽいので、中央銀行総裁の文章は全般的に好きではある。

④日本人の金融緩和や中央銀行についての勘違い

アベノミクスのスタートの時に、日銀を叩く動きが政治家や民衆の間で見られた。
不況の原因を見つけたい気持ちも分からなくはない。
しかし、当時問題になった中央銀行の独立性について。
実は、アメリカでもFRBの独立性を奪う動きが、主に極右と極左にあったみたいだ。
それを見た時に、どの国も同じなのだなと思った。
でも、中央銀行は、本当に悪者なのだろうか。
私は、違うと思う。
この本にも、日本の中央銀行は元から金融緩和をしていたとあった。
当時の日本人は、日本だけ金融緩和をせずに円高株安を誘導しているみたいな見方をしている人が結構いたと思う。
そう言う人達は、何故か政治家を責めない。
しかし、アメリカでは、『財政の崖』と言う言葉で表される様に、中央銀行の金融緩和の好影響を財政出動すべき議会が抑えてしまっている現実があったことが、この本にはある。
日本も、一応アベノミクスは拡大財政にはなったが、個人的には、本来支出されるべきさきは、インフラやオリンピックではなく教育だと、私も思っている。
『私も』というのは、教育の問題はアメリカにもあると著者が言っていたからだ。
雇用のミスマッチや、各国の均衡予算を目指す緊縮財政は、金融緩和の足を引っ張ってしまっていると思う。
国の破綻は怖いかも知れない。
しかし、財政の崖でも、一部の職員は自宅待機をしたが、軍属など必要な部門は出勤していた。
国がなくなって…、私たちの生活は変わるのだろうか。
今、豊かに暮らせる権利を放棄して…、財政緊縮をして…、皆が延命させようとしている国、それは、本当に必要な物だろうか。